分子間力で説明できる【気化熱と凝縮熱】
分子間力はファンデルワールス力とも呼ばれます。
今回は、この分子間力をメインに気化熱や凝縮熱、さらには圧力下での振る舞いについて説明していきます。
あらかたのことは、分子間力で説明できると思ってもらえればいいと思います。では、見ていきましょう。
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分子間力とは?
分子間力とは、分子同士の緩い結合のことです。
例えば、水分子はH2Oで酸素1個に水素2個が結合している状態です。この結合は電子による直接的な結合です。
この直接的な結合とは別に、周りにある水分子とも緩く結合しています。このような分子同士の緩い結合を、分子間力と言います。
なぜ結合できる?
しかしながら、水分子は電気的には中性のはずです。なぜ緩く結合できるのでしょうか。
酸素と水素を結び付けている電子は、振動したり、動き回っているからです。
電子が動き回っていたり振動していると、ある区間で見たとき、電荷の量が時間的に変化します。もっと専門的に言うなら、電荷が空間的・時間的に変化しているということです。
他の分子も同じように電荷の偏りを持つため、分子の群全体で緩い結合を保った水のような状態になれるわけです。
分子間力から外れる時
分子間力は、他の分子との距離が比較的近いときのみに起こります。
分子間の距離が離れすぎるとその影響は小さくなり、分子間力による影響を受けにくくなります(クーロン力は無限遠まで続くので、無くなることはありません)。
では、分子間力が離れすぎる時とはどんな時でしょうか。それはエネルギー(熱)をもらった時、もしくは圧力が下がった時です。
と言ってもこのままでは分からないので、『熱をもらった場合』と『圧力下での影響』について深堀りしてみましょう。
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気化熱と凝縮熱
まずはエネルギーである熱を受け取った時を考えてみましょう。
エネルギー(熱)を受け取った時:気化熱
プールから上がったときを例に考えてみます。
プールから上がった時、肌の表面についている水は、皮膚を通じて体温を奪います。
体温とはすなわち熱エネルギーの事。
また、熱エネルギーとは分子や原子の振動の事です。皮膚表面の分子の振動は冷たい水に伝わり、エネルギーを受け取った水分子はより大きく暴れようとします(熱は温かい所から冷たい所に移動するため)。
その暴れ具合がある一定の以上になった時、水分子による緩い結合を離れます。液体である水から、気体の水蒸気になる瞬間です。
気体になるときに分子間力で蓄えられていたエネルギーを持った部分が外れます。
エネルギーを蓄えていた箇所が外れるという事は、蓄えていた熱エネルギーは、結合を外すために使われてしまったということです。
- 水分子が肌に触れる
- 肌の熱(温かい) → 水分子(冷たい)となり、水分子は熱を受け取る
- 水分子はより振動
- 水としての結合を離れる
このように、液体の物質が気体になるために必要なエネルギーの事を気化熱といいます。また、言い換えて『気体になるときに熱が必要』と言ったりもします。
以上が熱を受け取った場合における分子間力のお話でした。
凝縮熱を考える
ついでに逆の場合を考えてみます。
気体である水蒸気が水に変わるときです。こちらも同様に分子間力で考えることができます。
ゆるい結合である分子間力が外れた状態にある水蒸気(気体)が、冷たい空気に冷やされたとしましょう。
すると以下の変化を辿ります。
- 気体である水蒸気が冷たい空気に触れる
- 水蒸気の振動エネルギー(熱) → 冷たい空気(振動が少ないエネルギー)の移動が発生
- 水蒸気の振動が弱くなり、冷たい空気はちょっと温かくなる
- 水蒸気を保てなくなり水になる
冷たい空気に触れると、暴れまわっていた分子のエネルギー(熱をより多く持った分子のエネルギー)は冷たい空気に吸収されます。
熱の動きは、『温かい所から冷たい所に流れる』んでしたね。
そして、暴れまわっていた分子の動きが小さくなると移動範囲が縮こまります。その範囲が水を形成する分子間力が影響する範囲になれば、水蒸気化から液体である水に変わったことになります。
この際、液体になるときに冷たい空気に対していくらかエネルギー、すなわち熱を放出しました。この熱を凝縮熱といいます。言い換えて『気体が液体になるときに熱を放出する』とも言ったりします。
圧力が働くところではどうなるのか
次に、圧力下での分子間力の影響を見てみましょう。
圧力が大きかったり小さかったりしても同様に考えることができます。
入れ物であるシリンダーに気体を入れ、ピストンで押す事を考えてみましょう。
圧力↑:ピストンを押したとき
ピストンを押したとき、シリンダー内部の圧力が上がります。
これは、内部の気体の分子の動き回れる空間が減ったにもかかわらず、押される前と同じだけ動こうとするからです。
すると、分子はより暴れ回る事になり、結果として熱が生まれます。
例えるなら、広いドッグランで走り回ってい犬を狭い家に持ってくるようなものでしょうか。
狭い家に持ってきても、ドッグランと同様に犬は走り回りますね。広い所では走り回っていただけなのに、狭い所では暴れていると感じますね。
圧力↓:ピストンを引いたとき
先程、『圧力が下がるときに分子間力の影響が弱くなってしまう』と述べました。圧力が上がった時と同様に考えてみましょう。
ピストンを引けば圧力が下がりますが、これは、分子の動き回れる空間が増えたためです。すると、今度は反対に分子がおとなしくなったように見え、温度も下がります。
また、おとなしくなるという事は、移動範囲が縮まることで分子間が狭まり、緩い結合が生きてきます。分子たちがと凝縮してくるという訳ですね。
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何が分子間力を強くする
最後に、何が分子間力を強くするのか考えてみましょう。
分子間力の強さは、分子量に比例します。分子量とは、分子を構成する原子の原子量を合わせたものです。
原子量とはすなわち、陽子と中性子の数のことです。
また、原子量の大きさに比例して電子の数も多くなります。原子の外側に位置する電子の数が多くなると、その分空間に電荷が増えることになり、分子間力にも強く影響します。
電子の数が増えて緩い結合の数が多くなると、結合を切り離すだけのより多くのエネルギーが必要になります。多くのエネルギーが必要になるということは、融点や沸点が高いなどの特徴を持つようになります。
資料:化学繊維の融点について
まとめ
分子間力による気化熱や凝縮熱をメインに説明しました。
他にも、
- 分子や原子の振動がすなわち熱である
- 熱は高い所から低い所に流れる
- 圧力↑で熱↑、圧力↓熱↓
- 分子量に比例して、融点や沸点も高くなる
という事を説明しました。
また、融点や沸点は、分子間力だけでなく、いろんな結合(水素結合、共有結合、金属結合、イオン結合)によっても大きく変わります。そこは注意が必要です。