PCR検査はガンガン実施すべき?

生物

今回は、PCR検査についてまとめてみました。
やみくもにPCR検査数を増やすことは、有効とは言えません。では、どんな使い方が有効な方法なのか。そのあたりを解説していきます。

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主題:PCR検査は増やせば増やすほどよいのか?

もくじ

PCR検査とは?

まずはPCR検査について。
そして、ついでに抗原検査、抗体検査についてもふれる。

PCR検査とは?

喉の奥のぬぐい液を摂取し、そこからウイルスの設計図であるRNAだけを抽出する方法。採取後は、RNAを一度DNAに変換し増殖させる。

増幅後にウイルスのDNAが検出されると、採取された人が感染していたと判断できる。PCRとはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)のこと。

抗原検査は?

ちなみに抗原検査は、ウイルスの特定のたんぱく質に対して反応するもの。
PCRがより細かい遺伝子情報検出するのに対し、抗原検査はたんぱく質を検出するものと覚えておけば間違いない。

なぜたんぱく質?と思った方は以下を参考にしてほしい。
参考記事;知っておきたい【ウイルス】の基本

抗体検査とは?

抗体検査は過去にウイルスに感染していたか調べることができる検査。
ウイルスに感染すると形成されるタンパク質(抗体)が血液中に存在するかを調べる。だが、新型コロナウイルスに関してはまだ謎が多い。

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PCR検査の有効な使用方法

ここではPCR検査をどのように活用すべきかを述べる。

医師の判断のもと、感染していると言い切れるには使える

PCR検査が行われるまでに様々なステップがある。
増幅反応・検査の手順・検体が正しくとれている・検体の保管・薬剤の管理、運搬の状況などなど。
そして特異的にDNAに反応し増殖するのため、これらのステップを経て陽性と出た場合は感染していると言い切ることが多い。

このように、陽性の人を正しく陽性と判断できる確率は70%と言われる。

しかしながら、感染しているのに陰性と判断してしまう時もある。

偽陰性について

感染しているが検査で陰性と判断視されてしまうことを偽陰性という。

検体をきちんと検出できず、RNAが不安定な状態のまま崩壊してしまい、陰性と判断されてしまうケースが多々ある。
30%はこの偽陰性の結果が出てしまう。

PCR検査は陽性の確定に使える

話をまとめてみよう。

  • 感染している人を陽性と判断する確率:70%
  • 感染している人を陰性と判断する確率:30% (偽陰性)

こうみると、偽陰性を30%も出してしまうPCR検査って役に立つの?と言いたくなる。
全くその通りで、PCR検査は陽性なのか陰性どっちなの?という判断は向かない。30%は外してしまうからだ。

ただし、医師の判断のもとで陽性であると断定するには向いている。

例えば以下のような場合だ。

医師は、患者Aはコロナウイルスに感染している疑いがあると診断。その後、PCR検査を行うと陽性と出た。

上記のように感染していると判断する材料として使う事には有効という訳だ。
また、医者が『感染している確率が高いと判断』することを専門用語で『検査前確率が高い』という(のちに述べる)。

つまり、『感染の疑いが深い人を断定する』という事にPCR検査は真価を発揮するといえる。

PCR検査の特異度

検査には特異度があり、これは『陰性の人を正しく陰性と判断する割合』のことだ。

PCR検査では99%の特異度があると言われている。
100人陰性の人がいたら、99人は陰性と判断される。ということは残り1人は陽性と判断される。間違って陽性と判断されることを偽陽性という。

ちなみに先程登場した『陽性の人を正しく陽性と判断する割合』のことを感度という。合わせて覚えてほしい。

1000万人の市民に対しPCR検査をした例題

さて、PCR検査についての感度・特異度について学んだところで、次は実際にありそうなケースを考えてみる。

ある市では1000万人いる。
ここで、市民全員に対してPCR検査を行った。ここで実際の感染者は1万人とする

まず、実際の感染者は1万人で、全体の0.1%が感染していることが分かる。

まずは非感染者999万人に対してPCR検査の結果から偽陽性はどれぐらいかというと、

  • 実際の感染者は1万人であるから、999万人は非感染者
  • 陰性の人を正しく陰性と判断する確率:99%
    よって、$999万人×0.99=98.9 = 989万人$
  • 陰性の人を陽性と判断する確率:1%
    よって、$999万人×0.01= 99900 \fallingdotseq 10万人$

つまり、10万人は偽陽性と診断されることになる。

また、感染者1万人に対してPCR検査を行ったとすると、

  • 陽性の人を陽性と判断する確率:70%
    よって、$1万人×0.7=7000人$は陽性と判断される
  • 陽性の人を陰性と判断する確率:30%
    よって、$感染者1万人×0.3=3000人$は陰性と判断される

となる。
ここで陽性と判断された人と陰性と判断された人を比べてみると、

  • 陽性:10万人(偽)+7000人(真)
  • 陰性:990万人(真)+3000人(偽)

となり、偽陽性の人は真の陽性である人数をはるかに上回る数になっている。
実際ならこの10万人分の病院のベッドが無駄に埋まってしまうことが容易に想像できる。

また、本当は病院で治療を受けるべき人が陰性となる場合も3000人いる。
このように、全体の数が大きく増えてしまうと、PCR検査をやみくもにやっていも陽性か陰性かの判断は大きくぶれてしまうことが分かる。

よって、PCR検査は陽性か陰性かの判断としては使いづらいと言える。
ではどうするかというと、医師による検査前確率を上げておいたうえでPCR検査を実施するわけだ。

ちなみに、なぜ検査前確率を上げるかについては別記事を参考にしてほしい
検査前確率とベイズの定理(補足)

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今回のまとめ

今回のまとめです

  • PCR検査は増やせば増やすほど良いのか?について取り上げた。
    →良くない
  • PCR検査は特定の遺伝子情報を増幅させることで陽性か陰性かを判断する
  • PCR検査は検査前確率を高めることで、陽性の確定として有効に使える
  • PCR検査はやみくもに検査数を増やしても意味がない