ケインズ経済学を理解しよう①【アダムスミス・マルクス編】

お金 現社

不況になると公共事業をしたり、金融緩和(お札をたくさん刷って世の中に出回らせる)などの対策を行います。

これらの政策はケインズ経済学に基づくものです。
この記事では最終的に、なぜこれらの政策を行う必要があるのかを解説したいと思います。序盤では、それまでの経済学の常識だったアダムスミスの考え、また、共産主義のもととなったマルクスの考えについて紹介します。

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ケインズ経済学以前のアダム・スミスとマルクス

ケインズ経済学が生まれる前、18世紀に誕生したアダム・スミスによる考えが、長い間重要視されてきました。

アダム・スミスによる考えは、『価値を生み出せば、おのずと裕福になる』という考えです。つまり、どんどん生産することで国は豊かになっていくという考えです。

そして、特に問題が無かったこの考えは、200年ほど続きます。アダムスミス派と呼ばれる経済学者も多く誕生しました。
ケインズもその一人であり、後にマーシャルプランで有名になるマーシャルも同様でした。また、マーシャルは、アダムスミスの考えを数学に落とし込んだことで有名です。

ブラック企業の社会経済は崩壊する

しかしながら、アダムズミスに従した産業革命のさなか、イギリスは発展していくものの、同時に苦しんでいる人たちも増えてきました。

それは、企業に搾取される労働者です。

この時代の労働者に対してコンプライアンスもくそもありません。
安い給料で容赦なく搾り取られます。

また、労働者は他にも多くいるため、企業は圧倒的有利です。労働者も気に入らなかったらやめればいいのですが、そうもいきません。
産業革命時代のイギリスは、今でいうブラック企業が蔓延していました。もしかしたら、もっとたちが悪いかもしれません。

そんな最中、マルクスによって資本論が出てきます。『資本主義経済は必然的に崩壊する』というものです。
資本主義のように、各々の企業が自分の利益のためだけに、いたずらに生産するのではなく、政府が計画的に生産量を管理した方が良いというものです。(マルクスの資本論では、具体的にどんな風に行うのかなどの解説はありませんでした。)

この時代のマルクスの考えは労働者にとっては救世主だったと言えましょう。
実際にソ連という共産主義国が誕生する前のロシアでは、ソビエトという労働者による自治政府がありました。
(市民ではなく、労働者が主役であることに注目してください)

不況の手立てが無かったアダム・スミス派

とはいえ、はやりその頃の社会のメインは資本主義でした。
人々はどんどん生産し、どんどんモノを売っていきます。ですが、第一次戦後アメリカの大恐慌をきっかけに、ヨーロッパ全体は一気に不況に陥ります。

例えばパン屋さんを例に挙げると、パンが売れなくなり、売れないのでパンを値引きして売ります。それでもなかなか売れません。
売れたとしてもパン屋さんの売り上げは雀の涙程度でしょう。これでは従業員に払えるお金はないため、失業者が増えます。従業員賃金カットがいたるところで起きたため、ストライキをする労働者もいました。

ですが、アダムスミス派の経済学者は何もすることができませんでした。
それどころか、『何も介入しないことが、いずれ回復につながる』とも言われていました。そんな中、なんとか経済回復できる手段はないかを探ったのが、ジョン・メイナード・ケインズです。

政府が介入するか・介入しないか

さて、アダム・スミスの考えは自由放任主義です。
この考えは『個人の好きなようにどんどん生産していくべき』という風に捉えられました。

対してマルクスは、『計画的に生産する』という政府の介入が入ります。

ケインズの経済学はちょうどこの間に位置するものと言えます。

という訳で、次回からケインズ理論の中身について取り上げたいと思います。考えることは簡単です。
デフレが起こす不況を打破したい!ということだけです。
デフレというのは、

  • 世の中にモノが余り、売れないので値段を下げて売る(デフレ)
  • しかし、世の中にモノが余っているため、商品はなかなか売れない
  • また、値引きした商品が売れたとしても、売り上げは少ない
  • 売り上げが少ないと、従業員に払う給料が無い:失業者が増える
  • 従業員も含め、企業を営む人たちもお金が無いので、節約しようとする:
    さらに売れなくなる

この一連の流れが、いわゆるデフレが起こす不況というものです。

ちなみに、世の中にモノが余らなければデフレが起きないので、モノが余らないように計画的に生産すればいい、と思うかもしれません。
それは、マルクスの考えた共産主義的な考えになります。すなわち、各々の企業に対して政府による制限がかかるという事です。多くの人は、この体制を嫌うため、最初からデフレ自体を起きないようにする事は難しい訳です。

さて、次回はどのようにこのデフレを打破していくのかを考えていきましょう。
>> 次回:ケインズ経済学を理解しよう②【限界消費性向 編】

参考文献:雇用・利子および貨幣の一般理論 (まんがで読破 MD134)