債券の発明家【ユダヤ人】と金融の関係

お金 宗教 現社

今回はユダヤ教であるユダヤ人と、金融についてまとめていきたいと思います。
歴史や現代において、ユダヤ人を言われたとき、ピンと来て欲しい内容に『金融』があります。

ユダヤ人と聞くと、『迫害されていた』という面が強いかもしれません。
ですが、『迫害されていた故に、金融と結びついている』という事も頭に入れておくと良いと思います。

参考:脱税の世界史

スポンサードサーチ

そもそも、金貸しの仕事しかできなかった

全てはこれに尽きると思います。
迫害されていたユダヤ人は、お金貸しの仕事しかできませんでした。
では、なぜ金貸しの仕事なのかというと、聖書で認められていない仕事だからです。

聖書には建前上、『利子をつけてお金を貸してならない』とあります。
お金貸しは、例えば100万円を1年間貸して、100万円+利子で儲けます。この利子が無ければお金貸しとして成立しません。

また、一般のキリスト教徒では、お金貸しは聖書に背く行為であったため、ユダヤ人が担うようになったわけです。

聖書に背く行為なのに、なぜ?

ですが、キリスト教の始まりであるユダヤ教でも、利子をつけてお金を貸す行為は聖書では認められていません。
ですが、この点に関しては、11世紀にユダヤ教の指導者ヨセフ・ベン・サムエル・トヴ・エレンが「我々ユダヤ人は、国王や貴族に税金を払わなければならないため、金貸し業は禁止しない」と公言しています。

つまりは、ユダヤ人によるお金貸しの仕事は、公式で認められている行為となっているわけです。

ユダヤ人への課税

キリスト教に嫌われているが故にお金貸しの仕事しかできなかった事に加え、ユダヤ人専用の課税があったことも挙げられます。
つまり、課税がひどかったため、お金貸しをせざるを得ないという事です、

【税】から見る【特権階級】と【国の崩壊】でもお話しましたが、国=税金をどう取り立てるか、と言っても過言ではありません。ユダヤ人においては、ヨーロッパでキリスト教が広まって以降、迫害されるのですが、その際に特別税としてユダヤ人から税を取り立てることが行われていました。
また、国や貴族や税徴収請負人やらに税金を取られており、仕事もありません。当時のキリスト教が流行っていたヨーロッパにおいて、ユダヤ人はお金貸しでなくては生きてはいけなかったのです。

ユダヤ人のお金貸しの金利

ちなみにキリスト教では利子をつけてお金を貸すことは1139年のラテラン会議において禁止されています。
ですが、キリスト教の中でも融資して欲しい人はいて、その時はユダヤ人に依頼するわけです。その時の金利は30%~60%で、かつ複利による計算でしたので、少しでも返済が遅れると、べらぼうに取られました。

なぜ嫌う?キリスト教とユダヤ教の関係

そもそもなぜユダヤ教とキリスト教でいがみ合っているのでしょうか。
この辺りは非常にデリケートなのですが、宗教としてユダヤ教がまずあり、その次にキリスト教としてユダヤ教ver2.0が生まれました。

キリスト教が生まれたのは、ローマ帝国の属国であったユダヤ人の国家の中です。そこでイエス・キリストが生まれ、ユダヤ人以外でも救われるのだという事を説き、広めていきます。
その時点でユダヤ人から見たイエスというのは、ただの『反旗を翻した、1人のユダヤ人』です。その後イエスは、ユダヤ人によってローマ帝国に引き渡され、処刑されます。

この時点で分かると思いますが、キリスト教というのは、イエスをユダヤ人によって殺されているため、ユダヤ人をあまりよく思っていないということです。また、ユダヤ教から見ると、キリスト教の旧約聖書・新約聖書の分類で良く思いません。キリスト教の旧約聖書は、ユダヤ教の聖書に当たるのですが、『これで完結しているのに古いとはどういうことだ』となるわけです。

さて、その後、ローマ帝国はキリスト教を認め、国教化(キリスト教を一本で国を締める)することで、立場が完全に逆転し、ユダヤ人への迫害が始まります。

スポンサードサーチ

国を持たない流浪のユダヤ人

さて、その後のユダヤ人は帰る国が無くなり、自分たちを認めてくれる国を転々とします。
住みついて、迫害されれば町を出て、また自分たちを認めてくれる国を探しに旅を出ます。また、常々課税される税金やいつ取られるか分からない財産にも気を付けなくてはなりません。そのような状況下で生まれたのが債券です。

債券の身軽さ

債券とは、【資産運用】お金にも働いてもらう~①単利・複利/国債・預金~でも触れていますが、お金を貸した証明書です。もう少し詳しく言うと、誰と誰の間での取引で、利率%で、いつまでに返すという紙です。この紙切れ一枚を持っておくだけで、何かあって家を出る際にも、非常に身軽です。

ちなみに債権は有価証券といって、株券や小切手などど同様に個人の財産権を表す証明書です。盗まれたとしても他人には使えませんし、紙切れ一枚の大きさのため、定住が難しいユダヤの人たちにとってはもってこいでした。

という訳で、ユダヤ人が迫害される中で編み出した生活の知恵が、債券だったという訳です。
そして、金貸しの仕事しかできないという事情により、現在でも金融に関することにユダヤの方が関わっていることが多いのです。

まとめ・参考文献

今回はユダヤ人が債券を発明した歴史について解説しました。

  • ユダヤ教・キリスト教も、聖書では、利子を付けたお金貸しは禁止されている
  • 11世紀:ユダヤ人によるお金貸しの仕事は公認
  • 宗教的差別、ユダヤ人の税など、追われる中、債券という仕組みを編み出す。

また、こちらの記事も併せて読んでいただくと理解が深まります。【資産運用】お金にも働いてもらう~①単利・複利/国債・預金~

参考:脱税の世界史