結局【レオナルド・ダ・ヴィンチ】って何がすごい?
レオナルド・ダ・ヴィンチと聞くと、
『モナ・リザ』や『最後の晩餐』で有名なのは知っているけど、
正直何が良いのかよく分からない…という方多いと思います。
今回はそんな方に読んでいて頂ければと思います。
書いている私自身も特にめちゃくちゃファンという訳でなく、
ただただ素直に感動したので、それを少しでも共有できればと思います。
また、後半ではレオナルドが残したとされる、たったの13品の作品のうちのいくつかを
紹介したいと思います。
参考書籍:ペンブックス1 ダ・ヴィンチ全作品・全解剖。 (Pen BOOKS)
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ズバリ一言で
さて、レオナルドの凄さを一言でまとめますと、
非現実の中で最大限のリアリティを追求した
という点でしょうか。
非現実というのはそのころ盛んに描かれていた
『キリスト教』をメインとした絵画の事です。
また、『最大限のリアリティを追求した』という理由として、
芸術のために
- 『解剖学・航空学・天文学・建築学・軍事学』を学ぶ
- 10年かけて輪郭線をぼやかす
- 『自分の知っているものだけ描きたい』というこだわり
をやっていたということです。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、ただ絵がうまいだけでは無く、
万学の天才と言われ、解剖学・航空学・天文学・建築学・軍事学のプロでした。
しかも、独学ですべて学んでおり、
『万学でなければ、芸術ではない。』というほど、芸術のためにさまざまな学問を学んでいました。
つまりは、『芸術のために人や建築を描く』、その為に『解剖学や建築学を学ぶ』といった、完璧主義者でした。
残された絵は13点ほどしかありませんが、
作品を描く際は、ひとつひとつ細かく研究して研究して
やっと一作品を描き始めるタイプの芸術家でした。
そのため、作品を作るたびに研究のために書いていた大量のメモも発見されてます。
そのメモは、幼少のころまともな教育を受けていなかったからか、
すべてが鏡文字(左右反転)で書かれていました。
さて、これからレオナルド・ダ・ヴィンチの作品をいくつか紹介していくのですが、
ですがその前に、当時の画風や背景について触れましょう。
当時の絵画とは
レオナルドが生存していた15,16世紀に絵画として描かれたのは、
キリスト教もしくは貴族の人物画でした。
>> キリスト教って何だっけ?という方はこちら
これは、『カトリックとプロテスタント、ここが面白い!』でも説明したように、
キリスト教徒がゲルマン民族を信者にするため、聖像や絵画を利用したのが始まりです。
また、実際に絵を依頼するのは、権力者であった教会関係者や貴族。
教会関係者はまさにそうだとして、
貴族が出てくるのは、教会の資金のバックボーンとして存在したから。
なので、貴族に個人的に頼まれて、人物画(自画像や愛人の絵)を描いてくれという依頼も多々ありました。
このようにキリスト教と貴族の人物がメインだった絵画の時代に、
レオナルドも生まれます。
当時の画風
さて、画風の方はどのようなものだったのでしょうか。
まとめると以下のようになります。
- 神がメイン
- 神や天使はのっぺり描かれる
- 持ち物で人物を特定させていた
少し加えて解説しましょう。
当時はイエス、マリア、天使などをメインとして描かれており、
背景にそれほど力を入れてはいませんでした。
神や天使の表情は硬く、色が均一で、のっぺりと描かれていました。
これにはきちんと理由があり、
『神や天使は神々しいものだから、神から作られた下等な人間のような表情をすべきで無い』という思いが根本にあるためです。
また、神々しさを表現するため、
頭の上に天使の輪が描かれていたり(イエスや天使)、
特定の武器を持たせたり(十字架のような槍をもっているとヨハネ)、
特定の配色の服装を着せることで(赤と青の服を着ている女性はマリア)、
人物を特定させる『アトリビューション』という技法が多く使われていました。
さて、以上が当時描かれていた絵画とその画風です。
作品紹介
レオナルド・ダ・ヴィンチが残したとされる作品は13作しかありません。
その中で、私の独断と偏見によって3作品だけ紹介したいと思います。
受胎告知
レオナルド・ダ・ヴィンチが20歳の時に描いた『受胎告知』という作品です。
>> 受胎告知を見る
かなり端的に言うならば、
大天使ガブリエルがマリアに『君、子供生まれるよ』『え?まじで』というシーンを描いています。
大天使ガブリエルというのは、
『ズバリ一言でまとめたい【ユダヤ教】【キリスト教】【イスラム教】』を
読んでいただいた方は分かると思いますが、三宗教に全てに登場しています。
三宗教を忘れてしまっても、大天使ガブリエルだけはなぜか頭に残っていますね。
さて、この作品の特徴として
- 油絵というのがまず新しい
- 忠実な背景
- ガブリエルの天使の羽を鳥っぽい羽根にした
というところ。
まず、油絵具を取り入れた事が新しいです。
その当時オランダで発明されたばかりの油絵具を使用していたということです。
『受胎告知』のあたりから油絵が流行ったといっても過言ではないでしょう。
そして、次に背景に力を入れまくりな点。
これは先程も話した通り、これまでの画家達は『神や天使』をメインに描き込んできました。つまり『背景に力入るより、神様ちゃんと描こ!』という流派が多かったということです。
建築物や草木はもちろん、
マリアが座っている床のタイルの模様も実は異様に凝っていて、
例えばタイルは焼いたときに空気の穴が生じるのですが、その細かい穴まで忠実に描いています。
また、この絵には当時なかった空気遠近法が取り入れられており、
遠くにあるものはぼかし、近くにあるものははっきり描かれています。
この技法は湿度が高い日本では当たり前のように使われていたのですが、
レオナルドがいた当時ローマでは空気が乾燥しており、遠くでもはっきり見えていました。
しかし、だからといって近くも遠くもはっきり描いてしまうと、
絵がのっぺりしてしまい立体感が生まれなくなってしまいます。
レオナルドはその点を考慮して、空気遠近法を取り入れたそうです。
さて、第三が『ガブリエルの羽を鳥の羽っぽくした』ということ。
一見すると何がすごいの?と思ってしまいますが、
当時、天使の羽は虹色に描くことが主流でした。『虹色に描いて、神々しさを出す!』この描き方が当時の当たり前のよう行われていました。
それをあえて『鳥の羽』にしたのには、『私は見たものしか描けない。見たものを忠実に描きたい』というレオナルドの強い思いから来ています。
また、ガブリエルについている羽も今に飛び出しそうなくらいリアルで、おそらくこの羽も実際に観察・研究し描いたと思われます。
他の画家が描いた『受胎告知』、『神』や『天使』を見て、再度レオナルドが描いた『受胎告知』を見るとその凄みが分かります。
最後の晩餐
さて、次に取り上げる作品は『最後の晩餐』です。
『ああ、テレビで見たことあるよ』
『でもねぇ、あれってそもそも何がすごいの?』
『どういう場面なの?』
という疑問も含めて説明しましょう。
『最後の晩餐』のシーンは、実はかなり難しいシーンであるという事。
- 大人数いるため、それぞれ区別する必要がある
- 裏切り者ユダの配置
この2点が難しいところなのです。
この絵のシーンは、
イエスと十数人の仲間たちと晩餐の際に、イエスが語り出します。
イエス『この中に…』
仲間『この中に…?』
イエス『私を裏切るものが現れる』
仲間『ええっ!?我々の中に裏切り者が!?』
という、衝撃の事実を口にする場面です。
そしてもうひとつのポイントなのが、
『その裏切り者は、私と同じタイミングでスープの皿に手を付けた者』と続きます。
その当時はパンをスープに付けて食べており、
裏切り者であるユダが『イエスがパンをスープに付けたタイミング』で毒を仕込み、
イエスを暗殺しようとしていました。
さて、この2点を押さえていなければ、
『最後の晩餐』というタイトルは付けられません。
ピンとこない方は、もし『あなたがこの絵を描いてくれ』と言われたら、どのように描くかを考えてみて下さい。
まず、登場人物が多い中、どよめいた雰囲気を醸し出す必要があります。
さらに、裏切り者であるユダの配置に非常に悩むでしょう。
イエスの近くにユダを描けばすぐばれてしまうし、かと言ってイエスから遠くの位置にユダを座らせると毒薬を仕込めなくなります。
その結果、他の画家が描いてきた『最後の晩餐』では、イエスの向かいの席にユダだけ座らせ描いていました。
しかし、レオナルドは『晩餐の時点では、裏切り者が誰かは分からないはず』と考え、
全員を同じ側の席に置き、少し離れているユダが、今まさに皿に手を忍ばせようとしている構図にしたのです。
また、イエスはボソッとセリフを言っているため、口がわずかながらに開いており、
ユダのギクッとした表情や、右手にお金の袋を握りしめていることから、お金をもらって暗殺を頼まれていることが分かります。
さらに、他の仲間がどよめいている仕草にも工夫があり、
この様子も、何パターンの人間を観察をし、実際にスケッチしたそうです。
ある人は眉をひそめて振り返り、ある人は隣の人の耳元で囁いたりする、
その様子が両端ではどよめきの波紋が大きくなるように描かれています。
正直やばすぎる。
以上の解説を一読し、再度『最後の晩餐』を見てみるともっと感激します。
また、ぜひ、他の画家が描いた『最後の晩餐』も見比べてほしいところです。
ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)
ラ・ジョコンダはいわゆる、モナ・リザの事です。
モナ・リザは皆さんご存じですね。
>>ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)を見る
ですが、こちらも何が凄いのか、分からない方が多いのではないでしょうか。
私も『モナ・リザは有名なんだな、ふんふん』ぐらいの認識しかありませんでした。
ちなみに、モナ・リザで描かれている女性のモデルは
貴族の婦人か、レオナルドの母親説があるのですが、今回そのようなことは触れず、
どのあたりがポイントなのか説明しましょう。
ズバリ
- 10年かけて輪郭線をぼかした
という点です。
輪郭線をぼかすことは、スフマート技法と呼ばれています。
これができた経緯は、
レオナルドがあるとき、『輪郭線』って現実的じゃないよねと疑い始めたところから始まります。
指の腹でこすって、顔や体の輪郭をぼかしていく、これがスフマート技法です。
鉛筆で描いた線を、指の腹を使ってぼかしていく、あのイメージです。
レオナルドは、
モナ・リザ以前の作品にもこのスフマート技法は取り入れていたのですが、
モナ・リザにかけた時間が半端なく、10年かけて、納得いくまで輪郭をぼかした作品です。
モナ・リザにお目にかかる機会があれば、ぜひ、そのぼかし具合に注視していただけると面白いでしょう。
13作品をざっと紹介
レオナルド・ダ・ヴィンチの13作品と一言コメントです。
興味を持った方は、ぜひ、これを参考に調べてみてください。
1:受胎告知
デビュー作。めっちゃキレイだが、表情はまだ硬い
2:カーネーションの聖母
受胎告知と同時期に描かれた。同じく表情は硬い。
3:ブノワの聖母子
カーネーションの聖母の3年後の作品。笑っている表情が今にも動き出しそう。
4:ジネヴラ・デ・ベンチの肖像
カッチリキレイとはこのこと。クローズアップしてもきめ細かすぎてヤバイ。
5:聖ヒエロニムス
未完の絵。おじさんが苦しんでいる姿。
6:東方三博士の礼拝
未完の絵。異なる時間軸を入れ込んでいるのが特徴。
7:岩窟の聖母
イエスに天使の輪がなく、
代わりに神だけができるポーズによってイエスであることを表現している。
武器や洋服で人物を区別して描いていた時代では、新しい試みだった。
ゆえに依頼者側の教会からは大ブーイングだった。
8:白貂を抱く貴婦人
テンという動物を抱いている貴婦人。こちらもパキっと綺麗である。
イル・モーロ卿の愛人
9:ラ・ベル・フェロニエール
貴婦人の絵。こちらも同じくイル・モーロ卿の愛人
10:最後の晩餐
さっき紹介したので、ぜひ読み返してほしい。
11:ラ・ジョコンダ(モナ・リザ)
さっき紹介したので、読み返してほしい。
12:聖アンナと聖母子
聖アンナはマリアの母。それとイエスが描かれている。不思議な構図なので一度見てほしい。
13:洗礼者ヨハネ
めちゃカッコイイ。PenBooksのレオナルド・ダ・ヴィンチ編の表紙はこれ。
一度見たら忘れない。絶対にポーズをマネする奴が出てくる。
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まとめ
さて、今回はレオナルド・ダ・ヴィンチについて紹介しました。
レオナルドの凄さというのは、『非現実の中でも、最大限のリアリティを求めたこと』と私は思います。
少しでも勉強になれば幸いです。
参考文献
参考書籍:ペンブックス1 ダ・ヴィンチ全作品・全解剖。 (Pen BOOKS)
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